不育症について
~不育症の方でも治療を受けて8割以上が無事に出産できています~
不育症とは?
妊娠するものの流産や死産を2回以上繰り返し、妊娠継続が得られない場合を「不育症」といいます。流産原因の多くは、着床した受精卵自体の偶発的な染色体異常によるものと考えられており、妊娠の15%程度に発生すると言われています。
厚生労働省の調査によると、妊娠した女性の約4割に流産経験があり、繰り返す流産を経験された方は2-3万人いると推定されていますので、流産が起こってしまう事は決して稀な事ではありません。しかしながら、流産を繰り返す何らかの「リスク因子」を有する場合は、専門的な治療を受けることで出産できる確率を高めることが可能です。
不育症の原因は?
前述したように、流産を経験すること自体はまれな事ではありませんが、2回以上繰り返す流産の場合に病的意義があるとされ、流産を引き起こしてしまう「リスク因子」を有している可能性を検索してみる必要性があると考えます。
「リスク因子」は様々で、夫婦のどちらかに染色体異常があることのほかに子宮の形態異常、内分泌異常(甲状腺機能低下、糖尿病)、抗リン脂質抗体症候群や血液凝固因子異常などの血栓性素因が考えられます。これらの場合、治療を行う事で流産を減らすことが可能です。また、幸いリスク因子が見当たらない場合は、治療せずに無事に赤ちゃんを得られる可能性も十分に期待できます。
不育症のリスク因子検査
子宮形態異常
子宮の形態を調べるために経膣的超音波検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査などを行います。また、必要に応じてMRI検査を考慮する場合もございます。
血液検査
原因 | 内容 | 検査項目 |
---|---|---|
免疫学的検査 | 抗リン脂質抗体 | 抗カルジオリピン抗体IgG |
抗カルジオリピン抗体IgM | ||
抗CL・β2GP1抗体 | ||
ループスアンチコアグラント | ||
抗PE抗体IgG | ||
自己免疫検査 | 抗核抗体 | |
血液中のビタミンD値測定 | ビタミンD | |
血液中の銅・亜鉛値測定 | 銅・亜鉛 | |
凝固系検査 | 血液のサラサラ具合や固まりやすさの検査 | APTT、PT |
第12因子 | ||
プロテインS | ||
プロテインC | ||
甲状腺検査 | 甲状腺機能の検査 | TSH |
F-T4、T3 | ||
糖代謝検査 | 糖代謝異常の有無の検査 | 血糖値 |
不育症の治療法
子宮形態異常
形態異常のタイプによっては手術による形成を行う場合がございますが、治療のメリット、デメリットについて慎重な判断が必要です。
内分泌異常
甲状腺機能異常症や糖尿病がある場合には、専門医に紹介させていただき医療連携の上、妊娠に向けての治療を進めます。
染色体異常、夫婦染色体転座
十分な遺伝カウンセリングを必要とするため臨床遺伝専門医との連携の上、治療方針を決定します。染色体異常の内容によっては、着床前診断(PGT)を考慮しなければなりません。その際は、実施可能施設へ紹介させていただきます。
抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体症候群は血栓症リスクが高く、それが流産を引き起こす要因となりますので血液を固まりにくくする抗血小板製剤の内服や血液凝固阻止製剤の注射等の併用が検討されます。
血液凝固因子異常
明らかな科学的エビデンスは実証されていませんが、抗血小板製剤の内服や血液凝固阻止製剤の注射等の併用が検討されます。